カフェオレの香り

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help リーダーに追加 RSS ミュウの砦の新年(前編)

<<   作成日時 : 2009/01/04 21:22   >>

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 ジョミーとブルーの新年話です。

が、あまり新年らしくない話です。
書いている本人もまったく「大晦日だ」「お正月だ」という感じではありません。
普段の休日と何も変わらないもので。

 

**************************

ミュウの砦の新年


「え? インタビュー?」
 ジョミーは退院間近になって、リオからその話を聞いた。
「ええ、そうです。ソルジャー・シンが入院中というニュースは世界中に知れ渡っていますからね。それに……もちろん地震で砦が被害を受けたことも」
 震災後の後始末等で今まで忙しかったリオが、ようやく落ち着いたため、今日は病院を訪れてくれていた。
 ジョミーは病室のベッドの上でふっと息を吐く。
「やれやれだな」
 テレビ局や出版社からの正式依頼書をジョミーは手にしていた。
「テレビ局や出版社……その他にもいくつか来ています。震災直後はそれどころじゃないということを先方も把握していたので、しばらくは遠慮していたのでしょう。多少は落ち着いた今になって、インタビューが殺到しました」
「新年早々なのに」
「年が明けたからこそ、マスコミもうるさくなったんでしょうね。新年の特別番組とか、新年の雑誌の特大号とかいろいろあるようですから」
「インタビューはやっぱり気が進まないな」
「そうだと思いましたよ。僕の方から適当に断っておきますね。まだ身体が回復していないから、マスコミの前に出るのは無理だとか理由をつけて」
「そうだな、すまないリオ」
 ジョミーは依頼書をリオに返した。
「いいですよ」
「それにしてもリオにはすまないことをしたな。ずっと僕は入院中で、結局、本部の仕事も任せっきりで」
「こんな時ですからね。本部のことは心配なさらないで下さい。ソルジャーがいらっしゃらないと、正直、大変ではありますけど、なんとかやっていますから」
「僕が退院したら、少しお休みを取るといい。実家にもしばらく帰っていないだろう」
「いえ、こんな時ですから。帰省はもう少し砦が落ち着いてからで大丈夫ですよ」
「家族も待っているだろうに」
「いえ、地震のことは知っていますから大丈夫ですよ。ソルジャー・シンは足を治す方に専念して下さい。まあ、ソルジャー・ブルーがついているし、僕は安心していますけどね。ソルジャー・ブルーは相変わらず忙しそうですね」
「そうだな。地震で患者が増えたから外科はてんてこまいのようだ。僕だけでもさっさと退院して病室を早く出ないと」
「そうは言っても無理は禁物ですよ。そういえばソルジャー・シンのお父さんはまだアーネストのところですか?」
 ジョミーは首を振る。
「いや、もう帰ったよ。軍の方の派遣の仕事があるらしい」
「そうですか」
「まあ、アーネストもホッとしてるんじゃないかな。父さんがいると口うるさいし落ち着かないみたいだし」
「アーネストもそろそろ地球防衛隊に帰らなくて大丈夫なんでしょうかね? 教官をするために来たのに、震災に巻き込まれて、救助から復興の手伝いまでやられて。ソルジャー・ブルーとは別の意味で忙しそうですよね」
「まあ、本当に帰らないといけなくなったら、キースがなんとか言ってくるだろう」
「こちらとしてはアーネストに長くいてもらえると助かりますが」
 とジョミーとリオが話している時に、バタバタと廊下から音がした。
「噂をすれば……ですね」
 リオが苦笑いをする。
「兄さーん! おはようー」
 と勢いよく入ってきたのは、ジョミーの弟アーネストだった。
「いつも廊下は静かにって言ってるだろう」
「あ、ごめーん、つい。オリアール先生にもよく注意されるのに」
 と言ってから、アーネストはリオの手にある紙に目を止める。
「リオ、それは何?」
「インタビューの依頼書です」
「インタビュー?」
「ええ。テレビ出演とか雑誌の……」
「じゃあ、地震のこととか?」
「まあ、砦の復興とかそういう話題が中心でしょうね。でもこれは断るんですよ。今はそれどころじゃないですからね」
 リオの言葉にアーネストはジョミーを見た。
「僕は受けた方がいいと思うけどな」
 ジョミーはアーネストの顔を見る。
「どうしてだ?」
「だって宣伝になるじゃない」
「何の宣伝だ」
「ボランティアだってもっと来てもらえれば助かるし、それにそういうのに出れば出演料みたいのがもらえるんじゃないの?」
 と言われてジョミーは顔をしかめる。
「お金の話は……」
「この砦は自給自足が多いし、畑や果樹園だってけっこう被害に遭ってるし……住居だって……お金はいくらだっているじゃない? 兄さんがマスコミに出て涙ながらに訴えれば、義援金だって……」
「アーネスト!」
 ジョミーはやや声を荒らげた。
「あのさあ、兄さん、今は綺麗事を言っている場合じゃないんだよ」
「綺麗事?」
「兄さんはそんなつもりじゃないかもしれないけどさ。でもこの砦にはまだまだ困っている人がいるんだよ。サイオンの力だけじゃ衣食住は確保なんか出来ない」
(衣食住)
 今は寒い冬なのだ。仮設住宅などは地球防衛隊が協力して用意してくれてはいるが……。
「兄さんの家でさえ、けっこうひどくやられてたよ。他の家だって前のように住めるようにするには、それなりのお金が必要だよ」
(お金)
 ジョミーの頭に現実問題が押し寄せてきた。
(綺麗事を言ってはいられない……か)
 ジョミーはそのことについて少し考えていた。
 すると……。
「こんにちは。子供達を連れてソルジャー・シンのお見舞いに来ました」
 と開けっ放しのドアの向こうからふいに声が掛かる。
 ジョミーがそちらを見ると、砦の保育園児達が一斉に並んでいる様子が見えた。
「こんなに押し掛けるとご迷惑だから、代表者が挨拶だけでもと思いまして。御迷惑だったらすみません」
 と言って笑顔で一礼したのは、保育士のムツミ・リクラだった。
 ジョミーはインタビューの依頼書を脇へ追いやる。
「ムツミ、よく来てくれたね。それに……みんなも。ありがとう」
 すると園児の二人、男の子と女の子が一人ずつ一歩前に出た。
「ソルジャー・シン、はやくよくなってください」
 と男の子がまず言った。
「これ、ソルジャーにおはなです」
 と女の子がバスケットに入った手作りの折り紙花を差し出した。
「ありがとう、嬉しいよ」
 とジョミーは女の子からバスケットを受け取った。
「生花は地震で駄目になってしまったので、みんなで一生懸命作ったんですよ」
 とムツミが微笑して言った。
 リオとアーネストはその様子を脇で眺めていたが……。
「ソルジャー、僕はそろそろ本部に戻ります」
 とリオが言った。
「ああ、そうだな」
「さっきの話はなかったことにしておきますから、気になさらないでください」
 とリオは言って病室を出ていった。
「さあ、あなた達は廊下で少し待っていてね」
 とムツミが言うと、代表の子供は病室から出ていった。
「ムツミ、保育園の整備や片付けで大変なのに悪かったね」
「いえ、とんでもないです。子供を助けるために怪我をなさったのに」
「いや、僕の骨折はそのことが原因というわけじゃないから気にしないで。普段からの行動が原因だから」
「でも園児を助けるために穴に……」
「そのことはもういいから」
「はい。あの……実はソルジャーにちょっと相談があります」
「相談?」
 するとムツミは頷いた。
「実はこれなんです。ミス・テラコン」
 と言ってムツミは何やら広告の紙を取り出した。
「テラコンって?」
 と言いながらバスケットを枕元脇の棚に置くと、ジョミーはその広告を受け取った。
(ミス地球コンテスト?)
 ジョミーはまじまじとその広告を見つめる。
(何だ、これは?)
 と思って広告から目を離してムツミを見る。
 ムツミはやや顔を赤らめてから、すぐに真面目な表情になり、それからこう言った。
「私、これに出場してみようかと思うんです」
 すると脇にいたアーネストが身を乗り出してきて、広告を覗き込む。
「あー、これ知ってる! 毎年、話題になるミスコンだよね」
 アーネストは興味津々といった様子だった。
「ムツミは美人だから、きっといいセンいくよ」
 などとアーネストはおだてている。
「そう思いますか?」
 などと肝心のムツミは乗り気満々だった。
「ソルジャーにエントリー許可を頂きたいんです。ミュウの砦出身と出るわけだし、ちゃんと許可が必要だと思いまして。それでお願いに」
「でも……」
 とジョミーは意外に思ってムツミの顔を見る。彼女は東洋風の美人ではあるが、こういう派手なことは嫌いそうに見えたからだ。
「私は賞金が目当てなんです」
 などと、これまた意外なことを言った。彼女は普段から実に質素な雰囲気で、ブランドや旅行などにも興味がなさそうだったからだ。
「賞金?」
「そうです。ミスか準ミスに選ばれれば、それなりの高い賞金が出るんです」
「お金目当てなんて」
 とジョミーが顔をしかめると、すぐに彼女が言った。
「でもその賞金がもらえれば、保育園の整備が出来るんです」
 というムツミの言葉にジョミーはハッとなる。
「保育園の整備?」
「そうです。地震で保育園もあちこちガタが来ています。サイオンの力だけではどうにもならない部分もあるし。やっぱりお金は必要だと思って。早く園児達に前のような生活を送らせてやりたいんです。今のままでは建物の安全も保障できないし快適な毎日は無理ですから」
「そういう理由だったのか」
 ジョミーは納得した。
「保護者にも安心して働いてもらいたいし。そのためには保育園の安定と整備がいりますから」
「なるほどね」
「最初はリースがこの広告を見つけてきて、自分が出るって張り切っていたんです。でもその後、保育園内で会議中にこの話題が出て、職員の推薦で私が出ることになりました。リースとW出場も考えましたけど、二人も同じ日に保育園を休むわけにもいかないので。なので代表で私が」
 するとそこへアーネストが割り込んだ。
「あー、分かる分かる! 僕でもムツミを推薦するよ。だって砦ではやっぱり目立って美人だもんね。スタイルもいいしさ」
「……そんな」
 とムツミは恥ずかしそうに目を伏せる。
「ねえ、兄さん、許可してやりなよ。こういう事情だしさ。他にも出たい子がいたらエントリーさせてみなよ。誰か一人でも書類選考で予選通過して、運よくミスか準ミスになれたら儲けもんじゃない?」
 ジョミーは弟のように安易には考えられなかった。が、それでもムツミの気持ちも理解出来るので、反対する気にはなれなかった。


 ムツミや園児が帰ると、病室にはジョミーとアーネストだけになった。
「結局、兄さんは許可しちゃったね」
「だってしないわけにはいかないだろう。保育園の整備が目的なんだから」
「まあ、僕も口先では褒めたけどさ、実際のところ、地球上の各地から美女が集まってくるわけだからさ、予選突破も狭き門なんだよね」
「そうなのか?」
「兄さんはそんなに簡単にミスになれるとでも思ったの?」
「いや、深く考えなかった。ミスになれるかどうかよりも、保育園の役に立ちたいという彼女の気持ちが大切だと思ったからね」
「ふーん。だけどさ、彼女がいくら美人だからって、それだけでミスになれるわけでもないしね。雰囲気とか審査員の好き好きもあるし、教養も必要だしさ」
「アーネスト、お前はずいぶんこういうことに詳しいな」
「だって僕はかわいい女の子好きだもん。雑誌のグラビアとかも見るしさ」
「そんなものは見たこともないな」
「兄さんももう少し世間一般のことに目を向けたら? それにしてもなあ……ムツミはあれだけの美人なのにさあ、それなのにミハイルはあっさりふっちゃうんだからな」
「ミハイル?」
「ああ、こっちの話。それにしてもジュリース・アミラよりはムツミの方が絶対にいいよね。ジュリースでは教養がいま一つ不適格って感じだし。そういえば地球防衛隊からも誰か出したら面白いのにさ。ミス・テラコン」
「キースが許可を出さないだろう」
 ジョミーは苦笑して言った。
「ジョナ教官とかが出たら、予選突破は間違いなしなのになあ」
「何を言ってるんだ、ジョナはミセスじゃないか」
「あ、そうだった。忘れてた。独身女性じゃないと駄目だったっけ」
 さすがにジョミーは半分呆れていた。

「なんだか賑やかだったみたいだけど」
 とふいに白衣姿のブルーが入ってきた。
「こんにちは。回診ですかー?」
 とアーネストはにっこり笑顔でブルーの顔を見て言った。
「そうだよ。もう少しで退院予定だから。だけど退院後もしばらくは空は飛べないかな」
 とアーネストに言ってから、ブルーはジョミーの方を見た。
「はい、足を出して」
 と言われてブランケットをめくった瞬間、枕元にあった紙切れ二枚がハラリと舞って床に落ちる。
「あ……」
 とジョミーが手を伸ばそうとしたら、ひょいとブルーに拾われた。
「何、これは? 何か本部の資料でも読んでた? こんな場所でまで仕事とはね」
「違うよ、それは……」
「インタビュー?」
 ブルーは瞬きしながらその紙を眺めている。
「それは断ろうと思ってたんだけど……でも気が変ったんだ。インタビューを受けようかと思って」
「兄さん?」
「ムツミの話を聞いて気が変ったんだ。砦のみんなが頑張っているのに、長である僕が病院で寝ているだけだなんて。役立たずのままではいられないよ。このままでは何の役にも立たないし。僕に今出来ることはインタビューでも受けて出演料をもらうことくらいだし」
「出演料?」
 とブルーが依頼書から目を離してジョミーを見る。
「その……地震でミュウの砦はあちこち被害を受けたし……だから修繕にはお金が必要なんだ」
「それで出演料?」
「うん。あの……マスコミに出たらまずいかな? 立場上ってことじゃなくて、身体の方で」
「足はもうかなり治っているし、別に問題ないよ。そろそろ松葉杖もいらないくらいだし。ただリハビリも必要だからね。座って受けるインタビューなら別に構わないよ」
 ブルーの言葉にジョミーは安心する。
「良かった。ムツミがミスコンに出ようと頑張ってるのに、僕だけ呑気にしていられないから」
「ミスコン?」
「あ、そうなんだ。実は……」
 とジョミーが言い掛けた時、ブルーがちょうどもう一枚の広告に目を止めた。
 そして……それと同時にアーネストが叫んだのだ。
「そうだ! 兄さん! ここにいるじゃないか!」
 ジョミーとブルーは揃って怪訝な顔でアーネストの顔を見る。
「何の話だ?」
「何のこと?」
 ジョミーとブルーは同時に言った。
「オリアール先生……いや、ソルジャー・ブルーに出てもらおうよ! ミス・テラコン!」
 その場の空気が一瞬固まった。


**************************


(後編へ続く)
 

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
あけましておめでとうございます!
早速のジョミブル話が読めて嬉しいです!
それにしてもブルーがミスコン??ですかあ!
それは世間の多数の目にさらされるし、ジョミーとしては気が気でないのでは?
反対とかしそうな感じですよね。
その前にブルー本人がその気になるかどうか・・・でも出たら優勝間違いなしですよね。
オレンジパフェ
2009/01/04 23:09
明けましておめでとうございます。
ミハイルはやっぱりモテるんですね〜顔を見てみたい(笑)
ブルーがミスコン・・・あんまり好きじゃなさそうですね。
でも「砦のためなら」と言って出場しちゃうんじゃないでしょうか?
ラムネ
2009/01/05 00:03
オレンジパフェさま
明けましておめでとうございます。
年末にTVをつけたら、ミスの世界大会をやっていて、こんな話を思いつきました。
でたら優勝間違いなし〜確かにそうですね。
しかし出るのには大きな問題が〜ということで次回へ続きます(笑)。
ジョミーはどうするか?
棚木初音
2009/01/05 00:23
ラムネさま
明けましておめでとうございます。
ミハイルは赤毛としか出ていませんが、シロエのように幼く可愛いタイプというわけでもないし、イーファみたいにズボラでもないので、世のそれなりに「いい男」の部類なのではないでしょうか?(今はイケメンとか言うのか?)
ブルーはさてどうするでしょうか〜?
その気にさせるのは難しくなさそうですが、問題はジョミーでしょうねえ。
棚木初音
2009/01/05 00:28
新年おめでとうございます。今回はミスコン話なんですね。でも出ない方向にいきそうな予感が。個人的にはブルーにエントリーして欲しいなぁ。女ブルーはドレスとか絶対に似合いそうですよね。ジョミーが問題って事はやっぱり反対するんですよね?
nanami
2009/01/05 17:32
nanamiさま
明けましておめでとうございます。
ジョミーは反対するでしょうねえ、やっぱり。
しかし今の女ブルーは今まで女として生きてきた実績もあるので、目立つ行為は好きでないにしろ、オシャレとかには興味あるんじゃないかと・・・。
なのでミスコンもそこらを突けばその気に???
棚木初音
2009/01/06 00:33
遅ればせですが、あけましておめでとうございます〜。
年末年始はネットと無縁の生活を送ってましたが、こちらをのぞいてみて、「あ、やっぱり更新されてる」とニカッとしてます。
ミハイルはイケメンなのですか?それは嬉・・・(<すいませんちょっと腐ってます)
ゆず
2009/01/06 00:56
ゆずさま
明けましておめでとうございます。
今年も書きますのでよろしく〜。
シロエはどちらかというと格好いいとかいうよりは可愛いタイプなんですよね。
ついでにイーファは面白い人という感じでしょう。
なので女性から見たらやはりミハイルが「男」としては一番素敵に見えるんじゃないですかね。
棚木初音
2009/01/06 22:13

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