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zoom RSS 琥珀色の涙〜転生ジョナ2(第25話)

<<   作成日時 : 2007/10/09 23:53   >>

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「マツカ、何があった?」

「……」
「黙っていては分からない」
 第三取調室にはまだ誰も到着してはいなかった。
 ジョナは立ったまま俯いていた。
「お前は何かを隠している。先に正直に話しておいてもらわないと、こっちも対処に困る。何もないのに噂が立つのか?」
「……キース」
「誰かが来る前に話せ」
「アーネストに……」
 そう言い掛けてジョナは口をつぐむ。
(あんなこと、とても言えない)
「マツカ!」
 キースはきつい声だった。
 その時、廊下の方から誰かがやってくる気配があった。
《マツカ、答えろ!》
 キースがいきなり送話に変えてきた。
 ジョナは思念波を発動させる。
《アーネストに……》
 するとキースは横目でチラリとジョナを見る。
《アーネストに……キスをされました》
 ジョナはそう思念波を送ってから俯いた。
(キースには知られたくなかったのに)
 キースはしばらく無言だった。ジョナから視線を外し、正面を向いた。
《それはいつだ》
 キースがしっかりとした送話で返してくる。
《私が熱で休んだ翌日です。帰り際に……》
《見られたのか》
《え?》
《誰かに見られたのか? それとも誰に見られたのかお前には分からないのか》
《見られてはいません。でも後からミハイルとイーファが来て話を聞かれました。ミハイルには口止めしました。でもミハイルは口止めしなくても話さなかったと思います》
《ではチェン・イーファが周囲にもらしたのか》
《そうです。でも後で彼とも話しました。もう誰にも話さないと言いました》
 とはいえ、あんなに噂が広まってからでは遅い。
《しっかり口止めしたんだな》
《ええ》
 その直後、ずらずらと軍服姿の下士官達が入室する。不思議なことに階級の高い者はおらず、殆どが下士官、そして最高でも尉官クラスのものだった。
「ではギルスとサヴォイ、誰から聞いた?」
 キースが低い声で尋ねる。キースの態度は至って冷静、そして殆ど表情を変えなかった。
「自分は今隣にいるウォン軍曹から聞きました。内容は同じです」
「自分は宿舎でリード曹長から……内容は……」
 そんな調子で次々に聞いた相手の名前を言う。
 誰が『関係を持っている』『浮気をしている』に変えたのかも分かったし、順に追っていくと、とある新入り伍長がこう言った。
「マツカ一尉がアーネストクラウンとキスをしていたと聞きました」
 ジョナは内容が近くなったと思った。
「それは誰が言った?」
 キースに聞かれた伍長は言った。
「同期のバルド伍長です」
「僕が聞いた内容は、アーネスト・クラウンがマツカ一尉を好きになって、それでキスをしたというものです。僕はチェン・イーファに聞きました」
 当然のことながらチェン・イーファの番になった。
 イーファは一旦口を開こうとしたが、ふいに顔を強張らせて話すのをやめた。
 ジョナは何だろう……と思った。
「あの……僕は……ええと」
 イーファはしどろもどろだった。
 その時、担当教官に連れられて、アーネスト・クラウンが入室した。
 ジョナとアーネストの目が合った。だがアーネストはすぐにジョナから視線を逸らし、今度はキースの方をじっと見た。
「お呼びでしょうか、アニアン司令」
 アーネストは顔色一つ変えなかった。
「アーネスト・クラウン、お前がマツカ一尉を好きになってキスをしたという話がある。ただしマツカ一尉はそんなことはないと否定した」
 キースは淡々と話した。
 アーネストは無言でキースを見ている。
《アーネスト!》
「アーネスト・クラウン、説明しろ」
「マツカ一尉は担当教官です。僕は教官に確かに憧れていました。でも噂のようなことはありません」
「ではチェン伍長はどうしてそんなことを言った?」
 その時、イーファが口を開きかけた。
「あの……」
 キースがジロリと睨むと、イーファは無言で俯く。
 アーネストは再び口を開く。
「マツカ一尉がお休みした日がありました。その翌日に出てこられたので、病み上がりだし帰りが心配で、それで追いかけようとしたら、慌てて階段でつまずいて手すりで顔を打ちました。何か金具に引っ掛けたみたいで傷もできました」
「それが何の関係がある?」
「それで外に出たらマツカ教官が僕の傷に気が付きまして、どうしたのかと顔を覗き込みながら青アザなんかを見てくれました。イーファはその覗き込んだ様子を見て、キスしたんだと勝手に誤解したんだと思います」
 アーネストは平然とした表情でそう言った。
「そういや、先週、派手な湿布と絆創膏をしてたっけな」
 新入りの一人がそう言った。
「というわけだ。根も葉もない噂に振り回されないように。以上! 解散! 各自、持ち場に戻れ」
 キースの言葉に一人一人が敬礼して、退室していく。
「マツカ、お前も戻って資料作成の続きをしろ」
 ジョナは戻ろうとしたが、他の者が去ってもアーネストだけは動かなかった。
「アーネスト?」
 アーネストはジョナの顔も見ようとせず、なぜかキースを真っ直ぐに見ていた。
「アーネスト・クラウンには残ってもらう」
「キース!?」
 アーネストが何か言われるのだろうかと思った。誤解でないことはキースは既に知っている。
「マツカ、お前は戻れ。お前とは後で話す」
「え?」
 なぜ自分のいる所で話さないのだろうと思った。
「戻れと言っている!」
 キースに強い声で言われて、ジョナは一礼すると部屋を出た。


*************************


 マツカが出て行くと、キースはシロエと二人になった。
 途端にシロエの態度が変わる。
「入った途端、送話してくるんだもんな。すごい勢いで。もしかしてイーファにも同じことをしましたか? 最初に喋ったのはイーファだし」
 キースは黙っていた。
「余計なことを喋ったら首が飛ぶぞ……てさ。ま、さすがにそんなこと分かってるけど。それにしても送話にすごい慣れているよね」
「目的は?」
「目的?」
「何のためにマツカに手を出した?」
「そんな人聞きの悪い。ちょっとキスしただけでしょ」
 シロエは含み笑いをして言った。
「だけど本当だったんだね。あんたがあの飛行挺演習場で言ったこと。同じ家に住んでいてもそんな関係じゃないって」
 キースはシロエを無言で見ていた。
「だってあの人……キスしたの初めてだった」
 キースは前に出るとシロエに近づいた。
「シロエ!」
「あ、あのステーション時代みたいに殴ったらまずいよ。さすがに。今、顔を腫らしたら絶対に『アニアン司令』に殴られたんだとみんな思うからさ」
 キースは握りかけた拳を下げる。
 ステーション時代のようにはいかない。今は立場ある軍人だ。新人下士官を殴って問題など起こせない。
「だけどだいぶ感情豊かになったよね。もっともっと怒ってもいいよ、キース・アニアン」
 殴ったらまずいと今言ったばかりのくせに……と思った。
「なぜマツカにそんなことをした?」
「別に恋人ってわけじゃないのなら、ジョナ・マツカが誰とキスしようが気にすることないんじゃないの?」
「もう一度訊く。なぜマツカにあんなことをした?」
 シロエはふっと微笑する。
「ジョナ教官を好きになったんだよ……って、前にも言ったような気がするけど、だとしたらキース、あんた信じる?」
「本気で言っているのか?」
「さあ」
「シロエ、ふざけるな!」
「僕にどうこう言うより、自分でジョナ・マツカにちゃんと言った方がいいんじゃないの? いつまでも曖昧な関係でいないでさ。ちゃんとした方がいいんじゃないの?」
「言う?」
「誰よりも愛してるくせにさ」
 キースは言葉を失った。
「あんたがそんなだから、ちょっとイタズラしたんだよ」
「悪戯?」
「そうだよ。だけど効果薄だったみたいだね。今度はキース、あんたの目の前であの人にキスしてやろうか?」
「シロエ!」
「早くなんとかしなよ。あの人のこと」
「お前に言われたくはない」
「だって歯がゆいんだよ、見ていたらさ。あんた達の関係。どこからどう見ても互いに好きそうにしか見えない。それなのに……」
「やめろ、シロエ」
「お前はマツカのすべてを知っているわけじゃない」
「え? そりゃあ、現世のあの人しか知らないけど」
「お前は知らないからそんなことが言える」
「どういう意味?」
「お前はマツカの最期を知らない」
「えっ?」
「マツカがどうして死んだのかを知らない」
「噂では殉職だって聞いたけど」
「私はお前を撃ち殺した」
 シロエの表情が凍りついた。
「だがマツカのことは殺さなかった」
「守ってやるつもりだったんでしょ?」
「守るどころか守られた」
「え?」
「あいつは自分の身体を盾にして俺を助けたんだ」
 シロエは目を大きく見開いた。
「二度とそんなあいつを見たくない」
「……キース」
 キースはシロエを置いて、取調室を後にした。


*************************


(第26話へ続く)

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
シロエは狂言回しの役でしょうか?
そう言えば、シロエとマツカ・・・男同士なら、接点なさそうですねぇ。シロエがふんっ!て無視しそう。シロエはジョナのことは「キースの想い人」だから興味を持っただけで、好感は別として、恋心は持ってないのですかね。
ゆず
2007/10/10 00:06
シロエのお陰で、すれ違いそうな二人、何とか
なりそうですね。
キース・・前世のことを引きずってますね。
必ず、同じにはならないと思うんだけど・・。
トラ
2007/10/10 00:22
キースは殺してしまったシロエがマツカに近づくのが怖いのかな?ジョナ教官を好きになったんだよって何度も言われても不信がつのるでしょう。
やっぱりシロエだとがんがんキースに言ってくれますね。
マツカの最後がトラウマになって、マツカを大事に思っているとはいえ、あまり泣かせないでね。
jojo
2007/10/10 00:26
ゆずさま
もし男同士だったら、シロエの方でマツカにはまったく興味持たなそうです。これが逆でシロエが女でマツカが男でも、駄目でしょうねえ。合いそうな感じがしない。
残りの部分は御想像にお任せします。
棚木初音
2007/10/10 01:07
トラさま
何とかなりそうに感じますか?
シロエにでもつついてもらわないと・・・。
マツカが女なので関係も違いますね。
棚木初音
2007/10/10 01:12
jojoさま
キースはシロエを撃ったことを後悔はしなかったと思いますが、でも惹かれていた相手なので・・・。
キースに食って掛かれるのはシロエだけ。
マツカはあそこまで出来ないですね。
棚木初音
2007/10/10 01:17
シロエがマツカにちょっかいを出したのは、やっぱりじれていたからなんですね(笑)確かにじれったいものなあ・・・
あ、今回の話でキースがマツカと結婚したがらない理由が・・・・・・と思ったら肝心のマツカがいない!一歩進んだかと思ったらなかなか進みませんね〜(苦笑)
キースが言っていた「自分を庇って死ぬあいつをもう見たくない」という意味の言葉を、シロエがマツカに伝えてくれればマツカも何かしらキースと相談できそうなものですが、シロエからじゃなくキースから直接言って欲しいような・・・。
・・・やっぱり難しいですね。
サフィエル
2007/10/10 05:22
サフィエルさま
シロエは書いていて楽しいキャラでした。
(いや、まだ出ますが・・・)。
シロエから伝えるのは、さすがにマズいんじゃないかな〜と思っています。
さてと・・・ついに山場です。
棚木初音
2007/10/10 17:45

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